更新日:2024年8月26日
「うちの子、成績がなかなか上がらないんです。
塾にも通わせて、学校の先生も熱心に指導してくださっているのに……。
やっぱり、地頭が悪いんでしょうか?」
僕は親御さんから、たまにこんな質問をいただきます。
実はこの質問、前提条件が間違っている可能性があります。
というのは、「先生や塾の講師が、熱心に勉強を教えているから、成績が下がっている」可能性があるのです。
今回は、「教えるから成績が下がる」ということについてお話ししたいと思います。
先生の授業を聞くと、成績が上がる?
「先生の授業を聞くと、成績が上がる」
これは、〇でしょうか? ×でしょうか?
おそらく多くの人は「〇」と答えると思います。
でも、たとえばこの記事を読んでいる大人のかたが、20~30年以上前の学校の授業の内容を覚えていますでしょうか?
「1ミリも覚えていない」「断片的になんとなく思い出せるが、ほとんど覚えていない」という人のほうが多いのではないでしょうか。
「成績が上がる」というのは、「新しい知識を得て、問題解決に生かせること」なのです。
こう考えた場合、少し年月が経ったら忘れてしまうような学校の授業を受けるだけで、はたして「成績が上がる」と言えるのでしょうか?
もちろん「学校の授業が無駄だ」ということではありません。
しかし、人によっては「頭がよくなる瞬間」というものを間違えて解釈している可能性があります。
これは教育学的に証明されている話なのですが、人間が何かを記憶して、その知識を生かせる状態になるのは、知識をインプットしている瞬間ではなく、アウトプットしている瞬間なのです。
つまり、先生の授業を聞いたり、教科書を読んだだけでは、ほとんど記憶には定着せず、問題を解くこともできません。
知識を取り入れる「インプット」だけでは、成績は上がらないのです。その知識を取り入れて、問題を解いたり、ノートに書きこんだり、人に説明したりして、知識を自分の中から外に出す「アウトプット」の時間にこそ、頭はよくなり成績アップにつながるのです。
人の話を聞くだけでは覚えられない
実際にコロンビア大学では、「覚えるべき事柄をインプットする時間とアウトプットする時間を計り、被験者たちがどれくらいの時間バランスのときに一番成績が高いのかを計測する実験」が行われました。すると、「インプットの割合が3割・アウトプットの割合が7割」のときに、いちばん記憶が定着することがわかりました。
教科書を読んだり、授業を聞いたりしているだけでは人は知識が得られず、問題を解いたりノートに書いたり説明したりしているときに覚えるのです。 つまり「成績が上がる」というのは、人から何かを教わっている時間ではなく、問題を解いたりしているアウトプットの時間なのです。自分で考えて理解して、ノートにまとめたり、問題を解く時間が長くないと成績は上がりません。
結局、先生がどんなにいい授業・わかりやすい授業をしたとしても、それを受ける生徒が復習したりする時間がないと、成績は上がらないのですね。
これを象徴するような話として、「自称進学校のジレンマ」というものがあります。生徒の成績を上げるために、普段から先生が熱意を持って授業をしていて、かなり強い口調で「この学校は進学校だから、サボらずに勉強をするんだ!」と言い、課題や授業の数が、他校に比べて圧倒的に多い学校のことを、「自称進学校」と揶揄する風潮があります。そういう学校の生徒は、むしろ成績が伸び悩んでいる、という話です。
アウトプットの時間が足りない
なぜこんなことが起こるかというと、メカニズムは簡単です。
先生が熱意を持っているので、こうした学校では「放課後にも講習をやろう」「もっと授業を増やそう」と、生徒に教える時間を伸ばす傾向にあります。
「平日は夜まで授業をしよう」「土曜日もみっちり勉強を教えよう」と、どんどん授業の時間が増えていって、生徒はインプットの時間が長くなっていきます。
人の話を聞く時間ばかりが取られて、アウトプットや復習の時間が取れなくなってしまいます。そうすると、いくらいい授業を聞いていたとしても消化不良で終わってしまい、成績が下がってしまうのです。
これは、親御さんが自宅で勉強を教えている場合も同様です。 どんなに親御さんが優秀で教えることができる場合でも、子どもの復習の時間が減れば、当たり前のように成績は下がります。親御さんが熱心に教えれば教えるほど、子どもはアウトプットの時間が取れず、成績が下がってしまうのです。
同じように、講義中心の塾(一斉集団授業系)では、熱意のある生徒のほうが、なぜか成績が下がってしまう場合があります。意欲があるので塾の授業を取りまくり、真面目に授業を聞いてはいるのですが、授業数が多くてアウトプットや復習の時間が取れなくなってしまい、塾に通っていないときよりも成績を下げてしまう場合です。
さらに言えば、教わる時間が長くなれば長くなるほど、子どもたちは「答えを覚える勉強」が中心になってしまいます。
授業では、多くの先生たちが「この問題にはこの解法だ」「こう聞かれたらこう答える」という指導を行います。
そうすると、「Aという問題にはBと答える」と、知識として答えをただ暗記する勉強がメインになっていきます。これだと、「A」の応用問題「A´」の問題には対応できなくなるのです。
自分で考える時間をつくることが大事
「うちの子、成績がなかなか上がらないんです。塾にも通わせて、学校の先生も熱心に指導してくださっているのに……。やっぱり、地頭が悪いんでしょうか?」
というふうに悩んだら、その子が今どれくらい復習(アウトプット)の時間を作れているのかを考えてあげる必要があります。
普段、通っている塾で授業を詰め込みすぎているのであれば、あえてその時間を減らしてあげることも有効な対策なのかもしれません。
当塾ではまさに「インプットの割合が3割・アウトプットの割合が7割」を教室で実践しております。
次回は、④早寝早起きなどの正しい生活習慣が身についていない。です。