更新日:2024年11月2日
子どもの『自己肯定感』は親の関わり方次第で大きく変わる!
「子どもの自己肯定感」という言葉を耳にする機会が増えてきました。
自己肯定感が高い子どもは勉強やスポーツでも成績が良い! とも言われています。
自己肯定感とは
自己肯定感とは、自分自身の存在や価値、良いことも良くないこともふくめて自分自身を受け入れて肯定できる感情です。ありのままの自分を認めて、自分は自分のままで良いと思えることです。つまり、「自分を好き」という感情のことで、自己否定とは反対の意味です。
自己肯定感を高めるためには、まず「ありのままの自分を受け入れる」ことが大切です。
幼いころは、「自分は今の自分のままで良い」と感じる場面が少ないのでなかなか自己肯定感を育てることが難しいです。だからこそ、自己肯定感を高めるためにも子どもが「自分は愛されている」と感じるような周りの大人の声かけや接し方が大切です。
日本人の自己肯定感は低い
国が発表した「日本と諸外国の若者の意識に関する調査」の「自分自身に満足している」「自分には長所がある」という項目で、アメリカ・イギリス・ドイツ・フランス・スウェーデン・韓国と比べて日本は断トツで割合が低いという結果が出ました。
自分には長所があるとアメリカの93.1%の若者が感じていることに対して、日本は68.9%でこの7か国中で最下位という結果でした。また、ドイツ、フランス、イギリスの若者は「自分には長所がある」と90%前後が回答し、この4か国の若者の80%以上が「自分自身に満足している」という結果に対して、日本は45%と自己肯定感が低いことが分かりました。
自己肯定感が低い子どもの特徴
自己肯定感は、ありのままの自分を受け入れ、自分が好きで自分に満足している感情です。
しかし、成功よりも失敗体験が多かったり、その体験が強く心に残っている場合は自分を否定的にとらえるようになります。
感情をコントロールできないので、情緒不安定になることが多く、自分も他人も信頼(信用)することができません。また、自信が持てない、あきらめやすい、協調性がないといったことが特徴です。
・自信が持てず、褒められても喜ばない
と思い込み、自己肯定感が下がることで、自信が持てなくなってしまいます。
できたことに対して褒められても「こんなのできて当たり前」「簡単だったから」「他の人もできいたから大したことない」と、自分は褒められるようなことはしていないと思い、褒められてもあまり喜ばないことも特徴の一つです。
・自分を責め、落ち込む
自己肯定感が低いと、うまくいかなかったり怒られたりすると「自分はダメなんだ」と自分のことを責め、落ち込みます。周りと比べて自分が劣っているというようにネガティブにとらえてしまい、気持ちを立て直すのにかなり時間がかかります。
人を避けたり、一時的に会話をしなくなるといった行動を起こすこともあります。
・積極的にチャレンジしない
スポーツ、音楽、勉強など新しいことに対して積極的にチャレンジすることはなく、やる前から「自分にはできない」と決めつけます。
また、周り子たちと比べてできない、自分が許せない、自分を認めたくないという感情があるので、周りの大人や保護者から「やってみたら?」「やってみよう!」などと声をかけられても動くことはなく、拒否してしまう子どもも多くいます。
子どもの自己肯定感が低くなってしまう原因
子どもの自己肯定感が低くなる原因はいろいろありますが、ほぼ周りからの言葉によって「自己否定感」がどんどん大きくなり、「自己肯定感」を下げる原因になっているのです。
では、どういう言葉で子どもの自己肯定感が低くなってしまうのでしょうか。
・子どもを否定する発言や、他の子どもと比較する
「人と自分を比較をすると幸福度が下がる」ということが研究でも明らかになっています。しかし、人と競争することで、自分が足りない部分をおぎなうように努力したり、ライバルと切磋琢磨して成長できるということは確かにあります。
ただ、その一方で、「できていない」「遅い」「下手」「〇〇君の方が上手」などと誰かと比べられて責められることはツラいし、自信をなくします。大人でも他人と比較されて評価されるのはイヤなものです。
仮に、本当に他人より劣っている場合、周りに言われなくても本人が一番分かっているし、悔しい思いをしています。だからこそ責めるのではなくて、その子は何が得意で、また、以前と比べてどう成長したのかといった部分をしっかりと認めて伝えてあげることが大切です。
・子どものチャレンジを、結果だけで判断する
小学生だと習い事の大会、発表会、コンクール、スポーツ系の試合などに参加することがあります。学校でもテストや通知票などで評価されることがあります。
この時に、その結果だけを見て「良い・悪い」「上手い・下手」「できる・できない」と判断してしまうとほぼ「自己肯定感は低下」します。
テストで良い点数が取れた時、習い事やスポーツなどで良い結果がでた時に「100点で良かったね」「1番になってすごいね」「センスあるね」「頭が良いね」というように結果や能力だけを褒めることはよくありません。
子どもを褒めるときは、能力や結果よりも、そこにいたるまでの過程、努力をして成長したプロセスの方を思いっきり褒めてあげることが大切です。
特に、子どもが工夫や練習をしてできるようになった部分や、子どもが認めてほしいと感じているところを見抜いて褒めてあげることで、より「自己肯定感」は高まります。
・子どもの話を聞かず、ほとんど保護者が決める
子どもが話すときにきちんと聞いてあげないことでも「自己肯定感」を低下させる原因になります。話を聞いてもらえないということは、自分に興味がない、理解してもらえないという感情が生まれます。それはまるで、「くだらない」「大したことない」と言われて、突き離されたように感じ、結局は「自分を否定」する原因にもなるのです。
通常、子どもは成長していくにつれて、自分の行動を自分で決めることが増えていきます。食べ物やキャラクター、洋服、遊びの好みが年中や年長くらいから徐々に出てきます。好きな物や欲しいものを自分で選ぶことができるのに、いつまでも親が決めていると子どもは自分自身を尊重してもらえていないと感じてしまいます。
また、本人は野球をやりたいのに、親の希望を子どもに押し付けるようにサッカーをやらせたり、本人の意思とは関係なく習い事や塾などに習わせるなど、親の価値観だけで決めてしまうことも「自己肯定感を低下」させることにつながってしまいます。
・しつけが厳しすぎる
「世の中は甘くないからこそ、努力で乗り越える人になってほしい」という想いを子どもに望んでいると、過剰なほどのしつけをしてしまう親も多くいます。
スポーツや勉強で、子どもの年齢に適さないレベルのことを強要したり、言いつけを守らなかった時には理不尽な厳罰を与えたり、あるいは無視をするといったことは、もはやしつけではなく「虐待」と捉えられても仕方ありません。
子どものためにと思ってやっていても、子どもにとっては唯一の味方である親に厳しくされすぎると「自分は親にとって大切な存在ではない」「生きている価値がない」と感じてしまいます。多少の厳しさの中にも愛情や優しさ、親としての思いやりを持って、そしてちゃんと伝えることを忘れないでほしいのです。
子どもの自己肯定感を高める
子どもの「自己肯定感」は、親や周りの大人との関わりの中で、高くなることも低くなることもあります。日頃から子どもと向き合う中で、子どものありのままを認めていくようにしましょう。
(自己肯定感が高い子どもの特徴)
・好奇心旺盛で、いろいろなことに興味を持つ
・どんなことにも積極的に向き合う
・たとえ失敗しても、気持ちの切り替えが早く、あきらめない
・周りのことを考えつつ、自分の気持ちも大切にする
・他人と自分を比べない
・物怖じすることなく、堂々としている
子ども自身がありのままの自分を受け入れていると、「自分は愛されている」「自分は大切で価値ある存在」という感情が、言動にも現れてきます。
子どもの自己肯定感を高めるアイ(I)メッセージ
子どもを叱るとき、ついつい子どもに完璧を求めて「正論」で叱ってしまう親が多いです。子どもを叱るときに注意するべきことは、「人格、能力を叱らない」ということです。
直すべきところは「行動」なのです。あくまでその子の「行動」について叱り、その子の「人格や能力」について叱ってはいけないのです。
子どもが好ましくない行動をとった時に「だから、あなたはダメなのよ!」「嘘をつくなんてうちの子じゃない!」のような言葉を使っていませんか?
また、我慢の限度を超えて子どもが良くないことをした時には、つい感情的になって「それはダメ!」「親の言うことはちゃんと聞きなさい!」のような”親が”正しいと思っている言葉を言いがちです。しかし、こういう言葉では子どもに正しく伝わらず、反発されることが多いです。
子どもが良くないことをしている時には、「お母さん(お父さん)は悲しいよ」というような(自分が主語の)メッセージを伝えたほうが、子どもの心にも響きやすく、受け入れやすいのです。このようなメッセージをアイ(I)メッセージと言います。
「叱る」というのは、決して子どもにイライラした感情をぶつけることではなく、良くないことを改善させるためのメッセージを伝えることです。できる限りの心に響きやすいメッセージを伝えるのです。褒めるときもアイメッセージで「〇〇している姿を見て、私は嬉しかったよ!」のように伝えることで子どもの自己肯定感はさらに高まります。
勉強したのに良い結果が出ないとき(小学生~中1対象)
がんばって勉強したのに、テストで良い点数が取れない、成績が上がらない子どもがいます。また、「親から見ると不十分でも、本人はがんばっているつもり。でも成績が上がらない」という子どももいます。
これらは多くの子どもが経験することですが、まずは親が結果にこだわるのをやめることが大切です。結果にこだわっていると、どうしても叱ったり愚痴を言ったりするようになるからです。
成績が上がらないことで子ども自身が悔しく思っているし、すでに十分苦しみ傷ついています。
それなのに、親からいろいろ言われるのはツラすぎます。
・3点セットの声がけ
こういう場合は、次のような言葉をかけてあげるのがベストです。
1 悔しい、ツラいなどの気持ちにまず共感する
2 子どものがんばった点を具体的に言ってあげる
3 それを見た親の気持ちをアイメッセージ(「私」を主語にしたメッセージ)で伝える
例1)
1 今回は残念だったね。
2 だけど、お母さんはあなたががんばったのを知っているよ。
大好きなゲームの時間を減らして勉強したもんね。
3 あなたががんばってるのを見て、私はそれだけですごくうれしかったよ!
例2)
1 悔しいよね。
2 でも、よくがんばったと思うよ。特に漢字はよく練習してたよね。
3 もうそれだけで、お父さんはうれしかったよ!
・3点セットで言ってもらえると?
このように、最初に共感が大事です。
悔しい、ツラい気持ちに共感してもらえると、子どもは「自分の苦しさがわかってもらえた」と感じて、それだけで気持ちが安らぎます。
次に、がんばったことを言語化してもらうことで、自分もそのがんばりを再確認でき、自己肯定感が保てます。
最後に、「親が自分のがんばりを喜んでくれている」と知ることで、とても報われた気持ちになります。
同時に、親の愛情を実感して、親に対する信頼感が高まります。
このような3点セットで言ってもらえると、子どもは「これからもがんばろう!」という気持ちになれます。
・やってはいけないNG対応!
でも、実際は、これとは真逆なことをやってしまう親が多いのです。
・子どもの悔しい、ツラい気持ちに共感しない
・がんばりを認めずに結果にばかりこだわる
・「がっかりした」「がんばりが足りない」「こんなことでどうするの?」
「あなたは口ばっかり」「いつになったらやる気が出るの?」などの否定語をぶつける
・「勉強しないと○○だぞ」と罰を与えて脅す
親がこういう対応をしていると、子どもの自己肯定感はどんどん下がります。
そして、「自分はダメだ」「自分には能力がない。頭が悪いんだ」「自分はがんばれない」「どうせダメだ」という自己否定感しかなくなります。
・もう勉強どころではなくなる
同時に、親に対する不信感も出てきます。
そして、「お父さん、お母さんは、僕のことをダメな子だと思っているようだ。こんな僕なんかもう見放されたな。もう大切にされてないな。愛されていないな」と感じるようになります。
これが「愛情不足感」と言われるものです。
こうなってしまうと、親の言うことは素直に聞けなくなるし、反発するようにもなります。
もう勉強どころではなくなります。
子どもの自己肯定感を高めるために
子どもの自己肯定感は、周りの大人の関わり方によって大きく変わります。
自己肯定感が高いと、周りの人への思いやりを持つことができたり、自分と他人を比較しすぎず、失敗しても立ち直りが早く、精神的にも安定して自分の可能性を広げることができます。
しかし、他の子どもと比較される、否定される、話を聞いてもらえないと自己肯定感が下がっていく原因になります。そうなると自分に自信が持てなくなり、何かに挑戦することはしなくなり、無気力や情緒不安定にもなりがちです。もし良くないことをした時は、「行動」に対して叱るようにして、「人格や能力を否定しない」ようにしましょう。
子どもの「得意・不得意」「できる・できない」は、当然ですが個人差があります。
できないことに対して責めるのではなく、子どもの成長や努力、そこにたどりつくまでの過程を認めて褒めてあげることが大切です。信じてくれる人、すべてを受け入れてくれる人がそばにいることで子どもは「ありのままの自分で良いんだ」と思い、自己肯定感を高めることにつながります。
次回は、新シリーズです。